ゲーム業界に入るなら大手それとも中小企業?

どこから書き始めるか迷いましたが、このサイトを訪問してくれた以上、あなたは既に、ゲーム業界に入る方法をある程度調べたのだと思います。また、入る方法を調べている以上、ゲームが何たるか、企画職がどんなものかも、調べ、また考え尽くしてあるのだと思います。

例えばゲームという媒体をとる必然性、あるいはゲームがこれから展開しうる市場について。その他にも自らの身の置き所、方向性など。
別段、難しいことはありません。特別に、なにか本を読む必要もない。無駄にゲームをプレイしまくる必要もない。(そんなことは、真に必要に迫られた時にやれ
ば良いことです。)

そうじゃなくて、あなたはあなたなりの哲学で、ただ、「『自分』が生きていくためには、『ゲーム』を利用するしかない」、そう言いきることさえできれば良い。

ゲームプランナーとは

コンピュータゲームの製作会社で、ゲームの企画立案から作成まで、あらゆる作業に関わる「司令塔」ともいえる重要なポジション。何をおいても必要なのは、面白いゲームを考え出す企画力。そして、それがなぜ面白いのかを会社に伝え、企画を実現するための表現力もいる。当然、流行をとらえる力、マーケットにおける情報収集力も問われる。ゲームのシナリオづくりに深く関わるため、文章力も少なからず必要である。また、デザイナーやサウンドクリエイタ一など、多くのエキスパートとの共同作業を円滑に進めるためのコーディネーターであり、彼らが気持ちよく仕事をするための雑用係でもあるのでコミュニケーション能力も必要とされる。

なんといっても最大の魅力は、ゲームが産声をあげてから世に出るまでの一連の流れを目の当たりにできることだ。専門学校も数多くあるが、特に資格はいらない。コンピュータのプログラミングができる必要も無い。ひとえにセンスが大切な職業である。
( 幻冬舍村上龍『1 3 歳のハローワーク』P-118)

上記は、私がゲームプランナーを目指すきっかけとなった文章です。村上氏は、難 解な内容を誰にでも、それこそ小学生にでもわかるよう「伝える」文章が書けるとい う点で、敬愛しています。なだけに、その文章にコメントしていくのは恐れ多いので すが……実際に業界にいた視点から、何点か補足させて頂きます。基本的には上記の 通りの職業だと思って頂いて問題ありません。

まず、「コンピュータゲームの製作会社で、ゲームの企画立案から作成まで、 あらゆる作業に関わる『司令塔』ともいえる重要なポジション。」 中小企業 においては、その通りです。特にディベロッパー、開発会社では、新入社員が 駄目な上司を食って下克上、なんてザラにあります。要するに、入社後まもな く『あらゆる作業』に関わり、『司令塔』になれるケースも少なくない。

( 逆に言えば、それだけ信じられない苛酷な環境が待ち受けていると考えてくだ さい。具体的には、「はい、これ仕様書」 と言って紙の切れ端を渡される とか。いやデータ化しろよっていう。)

何にせよ規模が小さい分、一人が多 くの作業に携わるしかない。よく言えばジェネラリスト、悪く言えば器用貧乏 になりやすい。

しかし大企業になってくると、だいぶ事情が異なります。特に「企画立案か ら作成まで、あらゆる作業に関わる」という部分。大企業になると、それこそ 1 0 年近く中にいるような大ベテランでも、何か一つの分野に特化している、良 く言えばスペシャリスト、悪く言えば専門バカという人がほとんどです。確か に「司令塔」にはなっているのだけれど、あくまでもその特化した分野のトッ プでしかない。極論を言うと、ディレクターすら全てに関与しているというケ ースは稀です。細かい部分の統括は、部下に任せてしまうんですね。だから、 よほど上手い連携がとれていないと、どことなく統一性が欠け、雑然とした作 品ができあがっていく。

ちなみに、巨大プロジェクトになればなるほど、この傾向は増します。例え ば……そうですね。折角ですし、具体的にR P G の制作をとって考えてみましょう。ドラクエとかF F 並みの巨大プロジェクト。

まず企画のセクションは、BATTLE . MAP . EVENT . MENUという風に、 大きく四つに区切られます。BATTLEセクションは戦闘システムを、MAPセ クシヨンはダンジョンや街の設計を、E V EN T セクションはシナリオ関係を、 そしてMENUセクションは、メニューやメニュー画面の構成を、主に取り仕 切ります。そしてこの四セクションがケースに応じて、更に細分化されていく。

私はEVENTセクションにいたのですが、EVENTセクションも、Movie班とQuest班とに分けられていました。Movie班はいわゆるムービーシーンを作 り、Quest班はそれ以外の、ボス戦の前のデモ(ムービーよりはちょっとクオ リティが落ちても構わない、ただし、より快適にプレイにしなければならない) を作成します。

シナリオは、EVENTセクションを統括しているボスが、一人で全て書いて いました。もちろん元となる小ネタは、チーム全体から多く募集していましたが。(FFのシナリオなどは、このやり方で作られたことで有名ですね。) た だ、最近は、シナリオもWRITERセクションとして独立した部署があり、そ の部署が、部署内だけで全て仕上げてしまうケースも少なくありません。

そうなると、EVENT セクションの仕事は、その出来上がったシナリオを、 ゲームの形に組み上げていくだけ、となります。要するに、主な仕事内容は力 メラ付だけ。他人が書いたシナリオ(= 設計図) を見ながら、黙々と場面を作っていく。

つまるところ、大手は「これだけがやりたい!」「これだけを極めたい!」 という人には向いていますが、色々なことに手を出してみたい… というより、 ゲーム制作の全工程に携わりたい人には不向き、ということになります。もちろん、「次はアレがやりたい」.「今度はコレがやりたい」と、その都度発信し ていれば、部署を移ること自体は可能です。可能ですが、それにしてもプロジ ュクトが巨大になると、異動まで最低2 年は拘束される訳で、良くも悪くも、 専門バカになっていくのは免れ得ません。というより、2 年もかけて培ったこ とを、そう易々と投げ出したいと思えるか、ということです。

従って、「何をおいても必要なのは、面白いゲームを考え出す企画力。」とい う記述に関しても、若干訂正しなければなりません。確かに中小企業ならば、 比較的自分の企画・アイディアを通しやすい(というより、人手不足につき一 人で何でもやらなければならない)ので、この「企画力」は必須です。しかし、 それこそ私がいた大手のクエスト班のような場所なら、アイディア力よりも、例えばアングルを決める絵的なセンスがあった方が、断然有利です。(もちろんそのアングルにも、「面白い」.「斬新な」角度、「ユーザーを魅せるため の意図」というものは存在しますから、その意味では「企画力」と言えるのか も知れませんが。)

要は、一つのことを徹底して極めたいなら大手に行けば良いでしょうし、幅 広く様々なことをこなしたいなら、中小企業に行ったほうが手っ取り早いでし ょう、ということです。どちらを選ぶかは、自分の特性をよく考えた上で決めてください。

っと、少し脱線しすぎました。次に参りまし ょう。
「それがなぜ面白いのかを会社に伝え、企画を実現するための表現力もい る。」 この部分に関しては、特筆すべき点はありません。その通りです。企 画をプレゼンする際、つまりゲームの核となる面白さを伝える際だけに限らず、「何故この色が良いのか」•「何故この動きが良いのか」 「何故この音が良いの か」といった細々したところまで、やはり伝えるためには、話術や表現力が必 要とされます。基本的に、根拠のないことを言っても、誰も取り合ってくれま せん。

「当然、流行をとらえる力、マ一ケットにおける情報収集力も問われる。」
ここもその通りです。創る= アウトプット作業ですから、常日頃から、インプ ットを意識しないとガス欠になります。また当然ながらゲームは売り物、ゲー ムプランナーは芸術家ではなく職業クリエイタ一ですから、常にューザーの視 点を意識していなければなりません。そのために、流行をチェックしたり、ニ ッチを発掘したりする努力は欠かせません。

「ゲームのシナリオづくりに深く関わるため、文章力も少なからず必要であ る。」 …… ここは、特に「シナリオづくりに深く関わる」という辺り、先述 のように一概に「そうだ」とは言えませんが、文章力が必要なのは間違いあり ません。というか、文章力がなければ書類が書けませんから、そもそも一次選考に落ちてゲーム業界には入れません。

「また、デザイナ一やサウンドクリエイタ一など、多くのエキスパ一卜との 共同作業を円滑に進めるためのコーディネ一ターであり、彼らが気持ちよく仕 事をするための雑用係でもあるのでコミュニケーション能力も必要とされ る。」 その通りです。というか、大手も中小企業も関係なく、ゲームプラン ナ一に最も求められる能力はこのコミュニケーション能力… もとい、どんな
人間ストレスにも耐えうる折衝能力ではなかろうかと、私自身は考えています。

実際に中にいてそう感じました。のし上がるためにはもっと個別の、それこそ、 その人特有の輝く何かが必要となってくるのでしょうが、単に「業界で食って く」というだけならば、一番必要とされるのはこのコミュニケーション能力で す。断言できます。逆に言えば、空気が読めない人はやっていけません。無通 です。不可能です。こればかりは自分でどうにかしてください。

「なんといっても最大の魅力は、ゲームが産声をあげてから世に出るまでの一連の流れを目の当たりにできることだ。」……魅力は、人それぞれですね。
私個人は、しょっちゅう変人に会えるのが楽しいです。(ゲーム業界の中の人 たちは、基本的にみな変人です。変態です。)

「専門学校も数多くあるが、特に資格はいらない。コンピュ一タのプログラ ミングができる必要も無い。」その通りです。実際、私も無免許無資格です。
学歴もあまり関係ありません。大手は学歴主義という噂をよく耳にするのです が、中に入ってしまえば、学歴なんて一切関係ありません。確かに、選考過程 において人事は学歴を気にしますが、かといって「実力があるのに学歴がなく て落とされた」などとほざくのは筋違いです。そんな言い訳をする暇があるな ら、人事にあなたを魅せうるだけの、真の実力をつけたほうがよほど建設的で す。

専門学校に 関しては、確かに数自体は多くあるのですが、まっとうな場所となるとほんのわずか… 少なくとも私がリサーチした限りでは、日本では2 校だけです。

「ひとえにセンスが大切な職業である。」概ね、その通りです。ダサい企 画書を見せられても読む気が失せます。ただ、私の恩師の言葉を借りるならば、 「企画に必要なのは3S (スリーエス)」。スピードと、正確性と、センスです。

以上で、プランナーについての説明(といってもほとんど概要ですが)は終わ りです。なんとなく、業界の中が見えてきたのではないでしょうか。上記以外の、書 いておいた方が良いと思う内部事情に関しましては、これから必要に応じて紹介 していきます。

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