たった3秒で自分の能力を最大限に引き出す方法

実は、私たちの記憶は、“事象そのもの”ではなく、さまざまな感情や感覚、行動と結びついて記憶されています。
あなたも何かのキッカケで、瞬時にしてある記憶がよみがえる、というようなことはありませんか?

街なかを歩いていて女性(男性)とすれ違ったとき、かすかに香水の匂いがして、それが以前付き合っていた彼女(彼氏)と同じ香水だったとき、あなたはどんなことを思い浮かべるでしょうか?
その香水をつけていた彼女(彼氏)との付き合いが、いいものだったか悪いものだったかは分かりませんが、その“匂い”によって一瞬にして昔の思い出を想起するかもしれません。

また、私の地元は長野の片田舎なのですが、地方から東京に出てきて普段生活していると、忙しい日常の中、なかなか地元のことを思い浮かべることはありません。
けれども、例えば信州そばを出すお店で、地元で食べたようなコシのあるおいしいそばを食べると、不思議なことに、地元で体験したさまざまな事柄を思い出すことができます。
そのときに思い出すのは、そばの味そのものだけではなく、地元の広々とした田園風景、宝石をちりばめたような満天の星空、夏の風物詩である鈴虫の音色や、冬山の真っ白な雪景色と身が凍るような冷たい空気…といった四季折々の情景や、田舎特有ののんびりとした感覚、何かあったかさを感じる家族団らんの声などを一瞬で思い出すのです。

人によっては、例えばそういう原体験のない人であれば、ただ「おいしいそばを食べた」ということでしかないものでも、私の場合、「おそばを食べること」が過去に味わった体験(そばの味だけでなく、それにまつわるさまざまな事象)を思い出す「引き金」になっていると考えることができます。

この「引き金」について、有名な実験があります。ご存知の人もいるかもしれませんが、ロシアの生理学者イワン・パブロフが実施した、通称「パブロフの犬」と呼ばれる、「条件反射」についての実験です。
パブロフは、犬にえさを与えるときに、ただ与えるのではなくベルの音を鳴らしてから与えるようにしました。
「(食事時に)ベルを鳴らす→えさを与える→犬が食べる(唾液を出す)」
この一連の流れを繰り返し行ったのです。

するとどうでしょう。これを繰り返した犬は、あるときベルを鳴らすだけで、空腹でもないのに唾液を分泌するようになったのです。
つまり、本来であれば「食事をする」ことが「唾液を出す」ということを引き起こすのですが、上記の流れを繰り返すことで、「ベルを鳴らす→唾液を出す」というショートカット(条件反射)を定着させたのです。

これは、先ほど説明したような、ある外的なキッカケ(引き金)が、身体的な、または内的な感覚を引き起こすということを証明した例なのです。
NLP では、この引き金のことを「アンカー(錨)」と言います。この仕組みを応用すれば、自分自身のリソースフルな状態を、ある特定の行動(アンカー)に結びつけることで、いつでも簡単にリソースフルな状態を呼び起こすことができるようになるのです。
※リソースフルな状態についてはこちらを読んでください。
想像力を鍛えて夢を実現する方法

ちょっと想像してみてください。
もし、あなたが理想とする人生を生きている…そう感じられたとしたらどうでしょうか?とてもやる気に満ち溢れ、さまざまなものごとに対して前向きになれるのではないでしょうか?
また、いままでに経験した“リソースフルな状態”を瞬時に思い出すことができたとしたら…?
アンカーの仕組みは、リソースフルなイメージや体に感じる感覚や状態を、ある“ユニークな行為”(普段はしない行為)と結びつけて記憶(体感)して、今度はその行為をすることによって、それをいつでも発動させることができるようにすることです。

「パブロフの犬」の実験の場合、「繰り返す」ということが、条件反射を形成するのに影響していますが、人間は「感情の起伏=変化」を利用することで、その条件付けを大幅に短縮することが出来ます。

その例として、以前ある女性のクライアントに「アンカー」のワークを行ったときのことをお話したいと思います。

私:「あなたの一番幸せだと思える状況をイメージしてみてください。または、今まで経験した中で、一番幸せだったなぁって思えることでもいいですよ。」
(※V、A、K を使って、詳細に想像してもらいます。)

私:「目を開けてイメージするのと、目を閉じてイメージするのだったら、どっちのほうが集中してイメージしやすいですか?」
相手:「目を閉じたほうがイメージしやすいです。」

自分:「では目を閉じてください。…自分が理想とする『幸せな人生』ってどんな感じですか?」
相手:「好きな人と、小さいながらもあったかい家庭を築いています。」
(※まだ漠然としたイメージだったので、V、A、K を喚起させるような質問をしてみます。)

自分:「それって、具体的にはどんな家に住んでいますか?間取りとか。窓からはどんな景色が見えますか?」
相手:「3LDK ぐらい。日当たりがいい南向きで、大きなベランダがあります。窓は大きくて広く、道路を挟んだ向こう側には、青々と茂った木々が見えます。」

私:「今あなたはどこにいますか?」
相手:「大きな窓のあるリビングにいます。」

私:「周りには誰がいますか?」
相手:「好きな人と子供たちがいます。」

私:「幸せな家庭を築いているのですね。」
相手:「はい」

私:「いま、なんとなくその感覚を実感できていますか?」
相手:「はい」

私:「そしたら、その気持ちをもっともっといっぱい感じてみてください。そして、その気持ちが最高潮になる直前、そうですね…98%ぐらいになったと感じたら、自分の耳たぶをきゅっとつまんでください。…ちょうどその幸せな気持ちが100%のピークに達したときに耳を触っている…というような感じです。」
(※しばらく想像する時間をとる。…そして相手が耳たぶを触る。)

私:「しっかりとその感覚を味わってください。そして十分味わったら、耳たぶから指を離してもいいですよ。」
相手:「はい」
(しばらくその感覚を味わってから指を離す。)

私:「どんな感じでしたか?」
相手:「なんか…すっごく幸せな感じ。」

私:「もう一度やってみましょうか?」
相手:「はい」
(※何度か繰り返してやってみて、体感覚にリソースフルな状態の感覚を十分に覚えてもらいます。そして今度は、リラックスをしてもらって、耳たぶを触ってもらいます。)

私:「さっきの感覚は十分に味わえましたか?」
相手:「はい」

私:「そしたら、今度はちょっと目を閉じて、耳たぶを触ってみてください。さっき触ったのと同じ場所、同じ強さ、そして同じ触り方で。」
(※すこし時間を与えます。)

私:「どんな感じがしますか?」
相手:「なんか…すごい…。さっきと同じ感じがする!…なんかゆったりとして、すごーく幸せな気分…。すっごく気持ちいいかも。」

私:「十分に味わったら、耳から手を離してもいいですよ。」
(※しばらくその「幸せな感覚」を味わってもらって、十分に満足したら指を離してもらいます。)

ちなみにこのワークの後、しばらくしてそのクライアントと話しをしたら、
「耳たぶ触るのがクセになりそうです…。」
と言っていました。

彼女にとって「耳たぶを触る」という行為は、普段はすることのない “ユニークな行為”でした。
そして耳たぶに触るという行為と「幸せな感覚=リソースフルな状態」を結びつける(アンカーを打つ)ことによって、いつでもその感覚を呼び起こせるように条件付けをしたのです。

否定的なアンカーを潰す

また、悪いことや辛いこと(事象)なども、やはり何らかの感情や行動と結びついている場合があります。
例えば犬が嫌いな人がいます。子供のころに、自分よりも大きな犬に吠え立てられて噛みつかれてしまったような人は、他人には理解できないような“恐怖”を味わっています。

犬が嫌いな人は、それがトラウマとなって、犬を見るだけで(それがたとえチワワのような小さな犬でも)そのときの記憶がよみがえり身体が硬直してしまい、パニックに陥ってしまうのです。

また、上記のような深刻なトラウマではないにしても、例えば会社の上司に怒鳴られたことや、人前で恥ずかしい思いをしたことなどが、その後の自分に否定的な記憶として植えつけられてしまった…そんな経験もあるのではないでしょうか?

しかし、これらの否定的な記憶も、それと結びついたアンカーを潰す、つまり先ほど説明したような、“リソースフルな状態のアンカー”によって上書きすることで、否定的な感覚を消し去ったり、以前よりも楽に捉えられるようにしたりすることができます。

過去に起こった不幸なできごとや、好ましくない事象そのものを変えることはできません。けれども、肯定的なアンカーによって否定的なアンカーを潰すことで、それに対する感じ方や考え方を変えることは可能なのです。

ワーク:アンカーを打つ(アンカリング)

○ まずは、普段しないような“ユニークな行為”を選んでおきます。
とは言っても、あまり突飛なものでは実行しにくいので、控えめでいつでもできそうな、けれどもユニークな行為を選んでください。

○ そして、あなたが理想とする人生、または、過去に経験したリソースフルな状態をリアルに想像します。
V(視覚)、A(聴覚)、K(体感覚)をフル活用して、頭の中で「実感」できるような想像をしてください。あなたはそこで何を見ていますか?まわりには誰がいて、そしてどんな音が聞こえていますか?周りにあるものや、衣服の感触、またはあなたの感情はどうでしょう?さまざまな事柄を体感してみてください。

○ その感覚が最高潮に達する直前、98%ぐらいの状態で、先ほど決めた“ユニークな行為”をしてアンカリングします。
ちょうどその感覚が100%の状態のときにその行為をしているような感じです。
○ 何度か繰り返して、常にその行為によってアンカーを“発火”させることが出来るかどうか、確認してください。

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