あなたの武器は?ゲーム業界に必要な人物

今、コンマ五秒で答えが浮かばなかったのだとしたら、それがあなたの敗因です。 あなたは今、業界に斬られました。5秒では遅すぎます。0.5秒で抜けるようにしてください。自らの武器も把握せずに表門を破ろうなんて、13年早いです。……と、 言いたいところなのですが、実際問題そんなに時間もないでしょうし、5時間。5 時間で、あなたには、あなたの武器を把握し、使えるようになってもらいます。

では早速。まず武器とは何か、というところから。単に得意分野という意味ではありません。とりあえず、白紙を一枚用意してください。大きさは何でも構いません。用意しましたら、以下の15個の質問に、サクッと答えてみてください。

好きなことは何ですか?
尊敬する人は誰ですか?
休日はどんな過ごし方をしていますか?
何故、ゲーム業界を志望するのですか?
どんなゲームを作りたいですか?
趣味は何ですか?
好きな本は何ですか?
今まで、どんなことに力を入れてきましたか? あなたにとってゲームとは何ですか?
面白さの本質とは何ですか?
得意分野は何ですか?
よく見るTV番組は何ですか?
座右の銘は何ですか?
ゲーム以外に興味のあるメディアは何ですか? 将来、何を成し遂げたいですか?

答えましたか? ちゃんと答えてくださいね。脳内で考えるだけではなく、書き出して下さい。書き出さないと、わかりにくいと思うので。

答えましたか? 書きましたか? では聞きます。
答えは、全て、一致していますか?
言い方を変えましょう。
答えは、全て、一貫していますか?

何のこっちゃ、という場合は、もう一度質問をよく見返してみてください。
これ、聞き方こそ違うんですが、実は全て、同じことを聞いているんです。というより、全てを通して、同じことを聞いている。

じらしても仕方がないので、先に種明かしをしてしまいましょう。業界が欲しがっているのは、こだわりのある人です。こだわり。拘束の「拘」と書いて「こだわり」と読みます。すなわち「こだわり」=「縛り」です。上の質問全ての答えに一貫性を持たせられるくらい、自らを縛っている人を、業界は好むのです。例えば、 そうですね。仮に武器がシナリオならば、

【質問】
① 好きなことは何ですか?
目があった人の1日を15秒以内に妄想すること。
=「キャラ作成」のアピール

② 尊敬する人は誰ですか?
毛利守(宇宙飛行士)、小松左京(SF作家)、鶴田謙ニ(SF漫画家) =「強い分野」のアピール

③ 休日はどんな過ごし方をしていますか?
最低3本は映画を梯子
=「積極的なドラマの摂取」のアピール

④ 何故、ゲーム業界を志望するのですか?
メニューの説明文とかワクテ力するし =「台詞以外の文字も好き」のアピール
⑤ 以下略
...というような感じに、全ての答えが、最終的にはシナリオというワード、力テゴリーに繋がって行くのがべスト。極論を言ってしまうと、一問一問の答えはどうでもいい。というより、何でもいい。重要なのは、その一問一問が、全て同じような系統(上記の例ならシナリオ)で統一されているかどうか、ということ。先の 15問の質問は、この統一性を測るためだけに並べたものです。
そしてこの統一性こそが、あなたの武器となります。

業界が欲しがっているのは、拘りのある人。すなわち、自らの武器(=統一性) をきちんと把握している人です。従って、この武器を把握していないことには、何も勝負できない、ということになります。それは面接一つとってみても明らかです。 特に大手の場合、面接は大抵三回あります。三次面接まである。この面接で、一次と二次と三次、やりたいことを聞かれた時、三回とも違うことを言ったら、そんなのは落ちるに決まっていますよね? 要はただの嘘つきですから。三回とも同じ答えを返すことで、初めて統一性をすなわち武器を主張することができる。

だから、たまに「ゲームプランナー=広く浅く」だと思っている人がいるのですが、もしそんな認識を持っているのであれば、今すぐに捨てて下さい。広い視野を持つことは確かに事です。大事ですが、業界が真に欲しがっているのは、あくまで 「見識は広く、でも深い所はとことん深くというタイプの人間です。(ちなみに、 「拘りのある奴が欲しい」と言ったのは、SEGAの某ヤクザっぽい素敵プロデュー サー。「見識は広く、でも深いところはとことん深く、という人が欲しいですね」と言ったのは、スクエニの某穏やかなトッププログラマーです。)

まず、ここまで大丈夫でしょうか?
武器=統一性
オッケーでしたら、次はいよいよ、あなただけの武器を定めていくターンです。 次の作業、たぶん疲れますので、ここでコーヒー休憩でも取ることをおすすめします。

さて、では手帖を一冊、あと筆記用具を用意してください。手帳の大きさは何でも構いません。私はB6サイズのものを使っています。小さすぎず、且つ持ち歩けるぐらいが良いでしょう。いわゆる企画手帖・ネタ帖と呼ばれる類のものです。

準備が整いましたら、以下の質問に対して、ブレインダンプして下さい。 Brain (脳内)をDump (廃棄)。文字通り、考えを外に押し出すことを指します。3?5時間くらいかけて一気にやってしまうと良いでしょう。 絶対に手を抜かないで下さい。

【質問】
1. 何(誰)のために、ゲームを作るのですか? ……30個以上
2. 芸術家と職業クリエイタ一の違いはなんですか?……20個以上
3. あなたにとって、ゲームとはなんですか? ……20個以上
4. どんなゲーム・ビジネスをやりたいですか? ……20個以上
5. どんなゲーム・ビジネスをやりたくないですか?……20個以上
6. ゲーム以外で、どんなメディアに関わりたいですか?……10個以上
7. ゲーム以外で、どんなメディアに関わりたくないですか? ……10個以上
8. どんなことを「面白い」と感じますか? ……30個以上
9. どんなことを「つまらない」と感じますか? ……30個以上
10. どんなエンターテインメントを提供したいですか?……20個以上
11. どんなエンターテインメントを提供したくないですか?……20個以上
12. あなたにとって「創る」とはなんですか? ……20個以上
13. なぜ「創る」のですか? ……20個以上
14. 「創る」ことで、あなたは何を得ますか? ……20個以上
15. 「創る」ことで、あなたは何を失いますか? ……20個以上
16. あなたの強みは何ですか?(経験、もしくは、知識)……20個以上
17. あなたにできることは何ですか? ……20個以上
18. あなたの身の回りにはどんな人がいますか?(強みを持った知人)……20個以上
19. 世の中の人は、どんなことに悩み苦しんでいますか?……50個以上
20. 将来どうなりたいですか? ……30個以上
21. 将来どうなりたくないですか? ……30個以上
22. ?年以内に何をやりたいですか?何を手に入れたいですか? ……30個以上
23. ?年以内に、いくら稼ぎたいですか?
24. あなたにとって、「嘘」とはなんですか? ……20個以上
25. あなたにとって、「真実」とはなんですか? …20個以上
26. 創るために、生きるのですか?
27. 生きるために、創るのですか?

それぞれ、横に書いてある個数以上出して下さい。(ブレインダンプは、 企画の発案時など使うことが多いので、この機に慣れてしまうと良いでしょう。具体的には、10分で1っの単語から100ワードくらい連想できるようになると良いですね。というか、それぐらい出来るようにならないと、 例えばスクエニの筆記試験は通過できません。できません、ということはないにしても、かなり難しいと思います。

この作業を終えたら、嫌でも方向性が縛られてくるはずです。そうして、 ある程度のビジョンが見えましたら、今度は何か一つだけ、最も自分の極めたいことを選んでください。それは文章でも絵でも、何でも構いません。 ただ一つ言えることは、出来るだけ具体的な方が良い。例えば、文章よりもシナリオ。絵よりも絵コンテ、といった風に。それがあなたの武器となります。

少しわかりにくいので、幾つか実例を挙げてみましょう。
例えば、つい先ほどSEGAの内定をもらった私の友達……Rさんの武器は、「開発援助」。スタッフを助けたいという「思い」です。いつだったか、深夜のファミレスで話をしていたとき、
「なにかいい話を描かなければならないとして、そのために自分の右腕を切る必要があるのなら、私は迷わず切るであろう人間だ。それが、生来右腕を持たない人に対して、どれだけ傲慢な行為かわかっていても」
そう私が言ったら、
「だったら、私はあなたが右腕を切らなくても良いように、先回りをしたい。創作バカな人たちが、気持ちよく創作に打ち込めるように、環境作りに励みたい」
と、彼女はそう言っていました。

非常に感銘を受けたので、よく覚えています。
そしてこの「開発援助への思い」を前面に押し出した履歴書を作成し、 「開発援助への思い」が見え隠れする企画書を作り、一次面接も二次面接も三次面接も、くどいくらい「開発援助への思い」を口にし、結果的に彼女は内定を勝ち取りました。

あるいは、同じく SEGAの、こちらはメインプランナーとして働いている私の先輩……D先輩の武器は、「数値」。文よりも理。大まかなシステムよりも、細部仕様を詰める作業。数値系。

「よくさぁ、企画書がどれだけ面白くても、仕様の段階でクズになるゲームがあるじゃん。あるんだよ。 なんでみんな、仕様書嫌がるかなぁ。こんなに面白いのに」

典型的な 文型人間の私は驚愕しましたが、D先輩の武器は「数値」。
こうした方向性・武器は、それなりの経験があれば自然と割れてくるものですが、そうでない場合は、とにかく考えに考え尽くして、未然に定めて行くしかありません。(そのためのブレインダンプです。)もちろん定めたところで、ズレが生じることはあるでしょう。が、何も考えずに動くより千倍マシです。というより、武器を決めないことには、そもそも敵を定めることができないのです。

例えば、さっきシナリオを例に挙げたので、もう一度シナリオで考えてみましょうか。仮に武器がシナリオならば、その武器で斬りやすい敵、スクエニやトライエース、あるいはテイルズスタジオを狙うのが定石です。(いずれも、シナリオや演出で有名な会社ですね。)しかしながら、 当然武器が定まっていなければ、この定石を踏むことは出来ません。それでは勝てません。闇雲にゲーム会社を受けた所で、人事はアンバランスさに気付きます。

くどいようですが、業界が欲しがっているのは「拘りのある人」です。 拘り=統一性。統一性=武器です。だからこそ、まずは武器を定めること。 本当に物を創りたいのであれば、あるいは物創りに懸ける思いがあるのであれば、絶対に武器は定まるはずです。定めて下さい。この作業は、あな たにしかできません。あなたの武器は、あなたにしか創れません。
そしてあなたにしか創れないもの、すなわち武器が解ったとき、あなたは業界でどう生きていけば良いか、またどう業界を利用すべきか、見えてくるはずです。

斬るべき敵は何ですか?

今、コンマ五秒で答えが浮かんだのだとしたら、あなたはもう、武器を定めた後なのでしょう。お疲れ様です。そして、おめでとうございます。ある意味、もう勝ったようなものです。あとは、具体的にレバレッジをかけて行くだけですから。これまでの工程をきちんと踏んできたのであれば、ここから先は大分楽……というよ り、楽しいはずです。

では早速。
行きたい会社を三社に絞って下さい。
あなたの武器がシナリオならば、シナリオに強い会社を。あなたの武器が演出ならば、演出に強い会社を。多くても三社までに絞ってください。ケースにもよりますが、三社以上になるとたぶんパニクります。(ちなみに私は、一社に絞って、その一社を一本釣りしました。)

因みに四社目以降は、三社目に落ちてから考えれば十分です。というのも、たまに「10社受けるなら、10社分の対策をしなければならない」と勘違いしている人がいるのですが、そんなことをする必要は全くありませんので。 むしろ、しては駄目です。する意味がわかりません。

だって、あなたは武器を元に敵を選ぶのです。あなたの武器が「炎」なら、敵はみな「氷」。必然的に、倒し方も「溶かす」で共通しているはず。もしあなたがピ力チュウならば、敵はゼニガメでありコダックでありコイキングであるべきなのです。当然、みんな10万ボルト……なんて豪華な技使わずとも、スパークで倒せます。
みんな。同じスパークで。

要するに、企画書なんて、会社別に作り直す必要はないということです。履歴書もほぼ同様。納得の行くものを一つ作ってしまえば、あとはそのデータをひたすらコピーして、10社に送ればいいだけ。マトモな書類ならそれで十分通用します。

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